以前にもSEOライティングについて書きましたが、前回の記事はあくまでライター側から見たSEOライティングについての話で、実際のSEO対策はもう少し細かいです。
今回は、もう少し筆を進めて、今度はWebサイトの担当者向けに、昨今のSEOとライティングの関係についてお話したいと思います。
変わるSEOとそれに合わせたSEOライティング
現在の検索エンジンは、各個人ごとにカスタマイズされた検索結果を提供しているため、SEOでも「検索エンジン上位表示」だけでなく「数ある上位ページから選ばれる」ことが意識されるようになってきています。
これはつまり、「検索エンジンだけを対象にした対策」では不十分であり、「いかにユーザーを自サイトに引き込むか」までを重要視するようになったことを意味します。このような状況下でSEOで効果を出すためには、検索エンジンの仕様に加え、人間の心理や行動をよく考えることが大切です。
タイトルや文字数の適切な長さとは
現在のSEOでは、「タイトルの文字数は27~30文字以内」という話があります。
これはgoogleにおける検索結果で表示されるタイトルの文字数に起因するものです。その文字数の範囲内であれば、ユーザーはタイトル全体から自分に必要なコンテンツかどうかを判断することができます。どんなに素晴らしいタイトルでも、一部しか表示されていなければ訴える力は損なわれます。制限された文字数内に、内容が具体的かつ魅力的に伝わるタイトルがあってこそ、ユーザーからのクリックを得ることができます。
また、前回、コンテンツの 文字数は3000~5000字程度のものが有効で多くなっているという話をしましたが、googleは公式的に「コンテンツの文字数と検索結果は関係ない」と関連性を否定しています。しかし、考慮されている項目には、ページやサイトの滞在時間や読了率・離脱率などが考慮されているためユーザーの行動を考えると文字数とは全くの無関係とはいえません。有用な情報が網羅されていることはもちろん読み応えのあるボリュームであってこそ、滞在時間も長くすることができるため、単純には文字数をある程度まで増やすことが有効となるのです。
大学のレポートや学術論文のサマリーなどは、情報処理が可能なボリュームを意識して3000~5000字程度に設定されているため、SEO対策でもそのあたりのボリュームを意識したものが多くなっています。
SEOのライティングとは直接関係ない部分
その他にも、ページがモバイルフレンドリーか、ドメインパワーがどうなっているかなど、多くの指標から最終的な検索結果が決まります。しかしこれらは、ライターがライティングをする上で気にしても仕方のないものです。これらはサイト提供側が考慮し、仕組みを作る部分です。
しかし、SEOライティングを期待するクライアントの中には、こうした内容についてもライティングでカバーできると思っている方もいらっしゃいます。たとえば、モバイルフレンドリーなページ作りを、昔のケータイ小説のような改行の多い文章だと思っている方も年配の方だと多いのです。あの書き方は、ガラケーのブラウザで読みやすいようにするためのテクニックで、当時はコンテンツを読ませるために有効な方法とされていました。しかし、今のスマホのブラウザは読み込みも早く、PCと処理能力はほぼ変わらないため、下手に改行が多いとむしろスクロールの手間が多く不快に感じます。それよりも適度な内容と大きさでチャンク(塊)を作って書いた方が、快適に読めるでしょう。
検索結果に影響するドメインパワーを高めるにはさまざまな方法がありますが、オーソドックスには長年サイトを運営し、定期的に更新し、コンテンツを充実させることが一番の方法です。ライターにできることは、コンテンツの作成を通し、そのお手伝いをすることだけです。ですので、サイト運営者の方は、とりあえずサイトのボリュームを作るだけでなく、ぜひ継続性のあるサイト作りを目指してほしいと思います。
1000ページを超える大規模な人材系の有名サイトでライティングに携わらせていただいたことがあります。このレベルの有名サイトでは、継続的なコンテンツのアップデートを実施し、2~3年かけて全ページで新陳代謝が行われます。結果、長年にわたって検索上位のキープが可能になっているのです。
この例からもわかるように、コンテンツを作るだけでなく、計画性のある運用を継続できるかどうかが、SEO対策の大きなカギであることを忘れてはいけません。今やメディアを誰でも作ることができるからこそ、そういった継続性が大きな差を生み出すのです。継続的な運用のためには予算や人員の確保、コンテンツの品質管理方法など必要なことが多いため、担当者には相当な実力が問われるでしょう。
WebサイトはITサービスとして運用する時代に入ってきた
SEOは、検索エンジンが個人に向けて表示する検索結果や、その検索結果を見た個人がどのような行動をするかを最適化しようとするものです。そのため、基本的にサイトの質を示すものと考えてはいけません。
SEOを考える上では3C分析における自社・顧客・競合を考えることが欠かせません。自社が何をコンテンツにするか、そして顧客はどのような情報を求めているかを徹底して考えることがスタートです。そして、SEOは絶対的な質を評価するものではなく相対的なものですので、競合がどのようなサイト(ページ)を作っているかも重要な情報です。こういったマーケティング的な観点も重要です。
SEOにおいて、ページの質が低いことを問題と考え、対策のためにライティングを依頼し、結果を求める方も多いのですが、それは問題のほんの一部です。サイトコンテンツの質ではなく、仕組み作りや運用の部分で劣り、検索エンジンやユーザーの信頼を確保できないサイトが非常に多いのです。
個人的には、Webサイトの運用やその一部であるSEO対策には、ITILやPMBOKの考え方が参考になると思っています。これらはITサービスのマネジメント方法についてのもので、担当者や関係者のレベルアップ、組織・制度づくりに役立つ視点を提供してくれるでしょう。持続可能なSEO対策を組織として行える体制にしていきたい場合におすすめです。
Webサイト運用やSEOの流れを見てみると、時代の変化への対応や、人材・予算の確保など抱える問題の多くは一般的なITサービスが通る道筋とほぼ同じです。そのため、システムやサービスというほどの大掛かりな仕組みではないとしても、ITサービスの手法を利用するべき時代になりつつあるといえるでしょう。
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